学費

 昨日、某大学で非常勤講師として講義を行いました。その大学で一番大きな教室に受講生が300名という大人数でした。これ以上、人を入れようとすると講堂しかないそうです。新学期が始まったばかりだから多いのかと思えば、そうではなくて、毎回、出席レポートを提出しなければならない講義らしく、それで欠席者が少ないということでした。それにしても講義をするには少し多すぎます。

 とても静かに聴いてくれる気持ちのいい学生でしたが、300名もいれば、ところどころ寝ている学生もいました。といいますか、講義が始まる前から寝ている学生もいました。考えてみれば、私もよく寝ていたなと思いながら、また教壇から見ると300人ぐらいいても寝ているのがよくわかるもんだなと妙に感心しながら、講義を90分きっかり行いました。

 学生たちは1年生と2年生ということでしたので、私の大学生の息子や姪っ子とそう変わらない年頃です。そうかと言って彼らを見て、息子や姪っ子を思い浮かべたわけではなく、むしろおそらく私と同世代であろう彼らの親御さんたちを思っていました。見返りの期待もできず、決して小さな額ではない学費を大学に納めて、お互い子供のために大変だなあ、と。何かしらまだ見ぬ同士のような親近感を覚えたものです。

 そう、前から3列目の席で寝ていたあなた。あなたは聴いていなかったかもしれないけれど、私はあなたのためだけでなく、あなたのお父さん、お母さんのために講義をしていました。目の前にしている学生のためであることはもちろんなのですが、彼らの両親のためにも真面目に講義をしなければと思いました。自分が学生の頃には思いも及ばなかった感情です。(野)

資料館ホームページへ戻る

Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark

コメントは受け付けていません。