近世陶磁研究会

 2月16日(土)~18日(月)の3日間、東京都の千代田区立日比谷図書文化館において開催された、“近世陶磁研究会”の大会に参加してきました。幹事を務めていることもありますが、発表もすることになっていたからです。今回のテーマは「江戸の武家地出土の肥前陶磁 – 罹災資料と初期色絵・鍋島・柿右衛門 –」で、千代田区が市民サービスとして独自に募集した方々を含め、日本の各地や海外などからも100数十名の参加があり盛会でした。

 近世陶磁研究会と言っても、多くの方々には馴染みのない研究会かもしれません。年に一度大会を開催していますが、まだ今回で3回目の設立から間もない研究会です。ただ、その前身として九州近世陶磁研究会があり、第6回からは九州近世陶磁学会として20回大会まで開催しています。幹事は佐賀県、長崎県の県・市・町の教育委員会や博物館に勤務する文化財関係の有志で、10数名ほどいます。しかし、さすがに20年も継続すると、最初はフットワークの軽かった幹事連中も、段々船頭ばかりになって漕ぎ手不足の感は否めません。やはり、“学会”と名乗る以上会員制が前提になるため、400名近くもいた会員の個人情報の管理や会計処理なども、片手間ではなかなか難しくなってきたのです。そのため、そろそろ潮時かなってことで、数年前より20回大会をもって解散することとし、最後は貯まった資金を存分に使って、世界から多くの研究者をお招きし、「世界に輸出された肥前陶磁」のテーマで大々的に大会を開催しました。

 ところが、各地の同様な研究会も、やはりご多分に漏れずです。幹事の高齢化(?)が進み、一つ、また一つと消滅し、学習や情報交換の場が急速に減少したのです。すでに実績があり個人的に情報網や人的交流を持つ中堅やベテランはともかく、これでは次世代の研究業界を担う人材の育成はできませんし、研究の遅滞を招くことにもなりかねません。そこで、再開の要望も多々あったことなどもあり、新たに設立したのが近世陶磁研究会なのです。こうなるのなら、予算残しておけば良かった…。後の祭りでしたが…。

 新幹事には、新たに若手も数名加わり、平均年齢という意味では焼け石に水とは言えども、ちょっぴり新鮮な顔ぶれになりました。また、“学会”から“研究会”にあえて格下げすることにより、年会費をいただく会員制度もスパッと止めて大会への参加費と発表資料の販売でやり繰りする形に改めました。また、会の名称から“九州”を外すことによって、他の地域の近世陶磁についてもテーマに加えられるようにしたのです。それにしても、“近世陶磁研究会”なんて王道みたいな名称が、どこかで用いられることもなく、今までよく残っていたものです。

 前身の九州近世陶磁研究会の発足以来、一貫して大会は九州陶磁文化館で開催してきました。できたら地方大会が開ければという声も幾度となく上がっていましたが、会場の準備をどうするかなど多々問題もあり、なかなか実現できませんでした。しかし、今回は千代田区日比谷図書文化館をはじめ東京近辺の研究者諸氏などの多大なるご協力のもとに、はじめて念願の地方大会を開催することができたのです。もっとも、東京で地方大会ってのも苦笑もんですが、まあ、あくまでも生産の本場はこちらなので、ご了承を…。

 不肖(村)も二日目の午後、「有田における色絵磁器の技術的変遷」のテーマで発表させていただきましたが、実は、プレゼン用資料がようやく完成したのは当日の朝でした。とりあえず、ギリギリセーフですが、こういうのはあまり精神衛生上は良くありませんね。もっとも、発表の際には必ずMacとkeynoteというプレゼンソフトの組み合わせを使用するため、ちゃんとプロジェクターから画像が表示できるのかって不安は、毎度のことながら、もっと精神衛生上よくありません。実際に、今回も開会前の初日午前の接続テストでは、繋がるまでに30分以上も要してしまいました。ついでに、今はリモコン代わりにiPhoneを用いるため、こちらも無線LANの設定とか、発表前からあれこれ綱渡り状態なのです。なので、変な話しですが、いざ発表がはじまってしまえば、逆にほっとひと安心です。

 今回は、同館の特別展「徳川将軍家の器」の関連イベントを兼ねて、研究会の大会を行いました。この展示には、有田町教育委員会からも130点ほどの出土資料を貸し出しており、有田の窯業の変遷を示す素材として、展示されていました。さすがに人口の多い東京ということもあり、多くの方々が見学されており、陶片やその説明に熱心に見入っておられる方もいらっしゃいました。こうした他地域における有田の窯業史の紹介は、単に歴史の理解を助けるという面に止まらず、現代の有田焼に無形の付加価値を加味する上でも極めて有効な手段だろうと思います。(村)

 

近世陶磁研究会の様子

資料館ホームページへ戻る

Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark

コメントは受け付けていません。