“初期伊万里”と“初期伊万里様式”

有田のやきものの歴史に関わる用語には、さまざまなものがあります。江戸時代から伝わるものもありますが、近代以降、研究の過程で誕生した言葉もたくさんあります。こうした用語は普段何気なく使われていることも多いのですが、実は、すごく使い方の難しいものも珍しくありません。

たとえば、“初期伊万里”と“初期伊万里様式”の違いなどはどうでしょうか?単に後ろに“様式”が付くか付かないかの差ですが、これで対象となる製品に大きくずれが生じます。“初期伊万里”は初期の伊万里という意味で、今日では、おおむね磁器が創始された1610年代から1650年代頃の肥前磁器のことを指します。しかし、“初期伊万里様式”は、初期の伊万里に類するスタイルの磁器のことであり、17世紀後半まで1世紀弱も作り続けられていました。つまり、“様式”の語の有無によって、年代で括るのかスタイル(様式)で括るのかの差を生じることになり、結果として、対象となる製品に違いが現れるのです。

と、ここまでなら、まだ“様式”の語の有無を確認すれば済む問題なので、それほど難しいことではありません。しかし、実際には書籍や雑誌など活字の文章では、そう単純にはいきません。それは、“初期伊万里様式”の意味で使われていても、よく“様式”の語が省略されているからです。たしかに“初期伊万里様式”よりも“初期伊万里”の方が語呂的にはいいのですが、それを読む側が文章の中身から判断する必要があるため、筆者がどちらの意味で使っているのか分からないこともしばしばです。ましてや、筆者自身、“初期伊万里様式”=“初期伊万里”と勘違いしている例も珍しくありません。しかも、これは何も“初期伊万里”に限ったことではなく、“古九谷”や“柿右衛門”や“古伊万里”などでも同様なのです。

こんな分かるようで分からない陶磁史用語は、他にもたくさんあります。まだこのブログははじまったばかりなので、まずは、しばらくこういう陶磁史用語のいくつかについて触れてみようかなと思っています。(村)

下:初期伊万里の染付皿(1620〜30年代 小溝上窯跡)

下:初期伊万里様式の染付皿(1660~80年代 広瀬向窯跡)

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